世界で活躍する人にインタビュー 海外でチャンスをつかんだイラストレーター

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世界とつながる人にインタビュー
海外でチャンスをつかんだイラストレーター
インタビュー:木内 達朗(きうち たつろう)さん

1966年東京都生まれ。国際基督教大学教養学部生物科卒業。卒業後は、絵の勉強をするため、渡米。カリフォルニアにあるArt Center College of Design卒業。絵本や新聞、雑誌、書籍など日米で活躍。『下町ロケット』などベストセラーの装画を多数手がける。ブラティスラヴァ世界絵本原画展、ボローニャ国際絵本原画展入選。講談社出版文化賞さしえ賞受賞。Society of illustrators/金メダル・銀メダル。東京イラストレーターズ・ソサエティ会員。

アメリカで権威あるイラストレーションのコンペで金メダルを受賞され、イギリスでは2億枚発行されたクリスマス用切手や、世界中に展開されたスターバックスのホリデーキャンペーンのための広告、紙袋のイラストレーションなども手がけてきたイラストレーターの木内達朗さんに海外でチャンスをどうつかみ、活躍されてきたのかお話しを伺いました。

中学時代は英語が好きだったのが、高校では一転して英語コンプレックスに

アメリカ旅行時の写真

海外でのお仕事が多い木内さんに英語は得意ですかという質問に「英語は苦手でした」と意外な答えが返ってきた。中学生のときは英語が好きで得意としていた、しかしICU高校に入学するとクラスの3分の2が帰国子女という環境に。ネイティブのように話す友人たちとの英語力の差は歴然で、テストでは最下位になってしまう。「英語が好き、から英語ができないぞというコンプレックスになってしまった」。それが、大学2年生の夏休みにアメリカへ旅行をしたことが転機となった。西海岸からニューヨークへ向かう途中、友人と別れて40日間一人旅をした。そのとき、「(英語に自信がないと思っていたけど)一人でもなんとかなるもんだな。いつかアメリカに行きたいな」と思うようになったという。

カリフォルニアの美大で叩き込まれたロジカルシンキングとプレゼン能力

カリフォルニアの美大にて課題制作の様子

生き物が好きで大学では生物を専攻していたが、自らの思い描いていたものとは異なっていたため、卒業後は子どものころから好きだった絵と英語ができたらいいだろうなと思ってアメリカの美大受験を考えたという。当時アメリカの美大受験には、自分の作品をスライドにしたポートフォリオの提出とTOEFLのスコアが受験校の基準を満たしていることが必要だった。第一希望の大学には、TOEFL550が合格ラインで3点足りず、第二希望の美大に入学する。ここでは日本ではなかなかできないヌードのデッサンなどドローイングの基礎を学び、2学期には第一希望だったArt Center College of Designへ合格する。キャリアがありながら、仕事を一端辞めて学び直しに来る人も多く入学する、レベルの高い学校だ。
学校生活では、英語が上手くなくても作品という別の表現方法があるが、プレゼンだけは別だ。フォーチュンクッキー(※おみくじが入っているクッキー)を使った授業では、引いたクッキーに入っているテーマを描くという課題。作品が完成する前の段階で何度もクラスでプレゼンをするのだが、先生や他の生徒たちから絵についてさまざまな角度から質問をされる。たとえば、「画面の片隅に小さくでも、何か意味がありそうなモチーフを描いたならば、それがその場所に存在する必然性はあるか」など「何となく描いた」という答えではダメで、自分がどう考えて描いたのかを説明できなくてはならない。何度もプレゼンをするうちに英語で相手を説得するために論理的な考え方とプレゼン力が鍛えられたという。

イラストレーターとしてアメリカで活躍するために必要なこととは

卒業間近の頃、アメリカの出版社に依頼されて絵本を描く仕事を始めており、帰国後も持ち帰って続ける。ただ、自分が日本人だからであるが、絵本の依頼はいつも東洋が題材で、教育的な内容のものが多く、徐々に偏りを感じるようになる。仕事の幅を広げるために絵本をやめて、より一般的なイラストレーションへ方向転換する。そしてクリスマス用のイギリスの切手やスターバックス、The New York Times、The Boston Globe、The Washington Postなど有名企業や大手メディアの仕事を幅広く手がけるようになる。中でもThe New York Timesなどの新聞メディアでは、英文の原稿を読んで解釈し、どんな絵にして伝えるかを考えないといけない難易度の高い仕事だ。

こうした仕事をアメリカで得るには、プロのイラストレーターによるその年の優れた作品が収録されるイラストレーション年鑑に自分の作品も掲載されることが断然有利だ。木内さんはSociety of illustrators という権威ある年鑑が行っているコンペで2010年、13、14年に金賞を3度受賞、入選も含め年鑑に継続して載っている。イラストレーターを決める立場にいるアートディレクターは高い確率で年鑑を参考にするので、掲載されると優れた仕事をするプロとして認知され仕事のオファーにつながりやすい。

また、海外では、レップ(Representative)と呼ばれるイラストレーターと出版社や広告代理店の間にたち交渉をしてくれるエージェントのようなものがあるが年鑑に掲載されると、有能なレップと契約する機会もできる。レップは、たいてい個人で行っておりクライアントへのプロモーションや仕事の報酬の交渉、トラブル対処、仕事が終わると請求書を出すなどをしてくれる。木内さんの場合、絵本のレップからイラストレーションのレップへと契約を変えたこと、年鑑に掲載されたことで、より有名な企業やメディアをクライアントとして得ることになった。また、受賞歴のあるイラストレーターを多く抱えるレップと契約したことで、大きな仕事につながっていったという。作品の制作段階になるとレップを通してのコミュニケーションは減り、依頼してきたアートディレクターと直接やりとりして絵を作り上げていくことになる。そのときのメールや電話では、失礼にならない英語を使うよう気をつけているという。

海外の仕事が多いが、日本を拠点としているため、英語のPodcastを聞いたり、友人のブログ(英語)や文法書を読んだり、海外ドラマなどを観て英語を忘れないようにしているそうだ。またSNS(Tumblr, Instagram, Twitterなど)でも英語で作品や仕事の紹介をするなど、英語での情報発信も続けている。(※英語版ブログ http://tatsurokiuchi.com/
最後に、英語を駆使しながら仕事をされている木内さんに「英語は好きですか」と聞くと、「英語、いまでも苦手ですよ」と静かに笑いながら答えてくれた。

(文責:編集部 高岡幸佳)

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