成否をにぎるのは教員育成プログラム

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成否をにぎるのは教員育成プログラム
金谷 憲 (かなたに けん) 東京学芸大学 名誉教授

方向性は正しいが体制整備に課題

文部科学省が平成25年12月13日に公表した「英語教育改革実施計画」を、どう評価されますか
長く英語教育行政にかかわってこられた立場から現時点での日本の英語教育の姿をどう評価されていますか。
 私は平成15年に策定された「『英語が使える日本人』の育成のための行動計画」(http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/020/sesaku/020702.htm#plan)および、そのフォローアップ調査などにも関わってきました。昨年12月に発表された「英語教育改革実施計画」には直接関与していませんが、この10年の英語教育改革の流れを見ていると、スローガンや計画を作ってはまた作ることを繰り返してきていて、いざその体制整備になると頓挫するような感じを受けています。大学でもそうですが、中期計画を立てて、しばらくすると見直しをして、また中期計画を立てるといったように、計画作りに追われ、実態的に改革が進んでいません。例えば、「英語が使える日本人」行動計画では、中学校卒業段階で、「卒業者の平均が英検3級程度」と達成目標が明記されていましたが、残念ながらいまでも達成率は3割程度。7割の生徒が未達という状態です。平成23年6月にとりまとめられた「外国語能力の向上に関する検討会」の「国際共通語としての英語力向上のための五つの提言と具体的施策」
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/082/houkoku/1308375.htm)では、同じ目標を平成28年度までの5年間で達成と打ち出しました。意気込みはいいのですが、現実を十分に踏まえた改革でなければなりません。うまくいかないところは一つひとつ吟味し、解決していくことが必要です。
 英語教育ということでは、計画の方向性や内容そのものは評価しますし、小学校、中学校、高校と広がりをもって、統一的なイメージが作られつつあり、進歩しているのは確かです。方向性は正しいが、具体的解決策、その実行性にいささか欠ける感じがします。

はじめる時期ではなく絶対量と密度が重要

「英語教育改革実施計画」の一つの柱として、小学校英語の開始時期を3学年からに前倒し、5・6学年では正式な教科にする(2018年度から実施予定)ことがうたわれていますが。
 小学校英語については、すでに始まってしまっていて、いまさらどうのこうの言っても仕方がないでしょう。ただ気になるのは、限られたリソースを蕎麦のように薄べったい板状にのばしてしまってはいないかどうか。英語教育の開始時期が早くなっただけで、絶対量が変わらない。ざるで水をかいだしているようなもので、なんどやっても結果は同じ。今でいうと、小学校5年、6年で週1回の授業でいったい何ができるのか。中学になると週4回。でも、その日に習ったことは次の日にはすっかり忘れてしまう。 この繰り返しです。毎日英語の授業を行うなど、ある時期に集中してやるべきというのが私の年来の持論です。ちょこちょこと低密度で学習させるのは賢い方法ではありません。6年から8年も英語学習をやっていて、この程度、もう2年増やし、また2年増やし、12年間も英語学習を継続して、それでもダメとなると、国民のフラストレーションが増えるという副作用があり、好ましい状況にならないことが心配です。絶対量の確保という意味では、5年6年の週1回の授業でどうなるものではありませんが、やっと風穴があいたので、それを大きくしていくべきでしょう。
 小学校か中学校か、ということではなく、限られたリソースであれば、どこかで集中してやるべきです。いまは、ポツンポツンと一キロおきに兵隊が立っていて、敵と戦おうとしている感じです。基地がどこにもない。どこかで集中的にやればよいわけです。橋頭堡、ビーチヘッドを構築するのです。もし、小学校に固める、集中する、毎日やる、一日2時間、6年間やる、というのなら私は大賛成です。
現実問題として、誰が小学校で教科化される英語を教えるのか、という問題がありますが。
 教科にする場合は、教職員免許法を改正する必要があるでしょう。小学校教員免許証の場合、現状では、教科又は教職に関する科目が10科目あります。英語が教科化されると、現在ある教科の指導法に加えて、英語の指導法が加わらなければなりません。問題は、小学校の教員免許を出している大学で、教員を志望する学生に英語を教える人を配置する必要がある点です。いまは教科でないため、選択科目扱いで希望者には対応していますが、小学校で英語が教科となると、そうはいきません。東京学芸大の例で申しますと、初等科学生が500人前後と多いのですが、英語教授法などを教えるクラスを一クラス定員50人とすると10クラス以上となり、相当な数の教員を配置する必要があり非常勤講師を動員しても間に合わないでしょう。だれが英語教員を志望する若い人たちに英語を教えるのか、という体制整備が大きな課題です。
小学校で英語が教科化された場合、中学校での英語教育はどう変わるべきでしょうか。
 現実的には、いま中学で教えていることを小学校に下ろすことになり、必然的に中学校での学習到達点が少し高くなることになります。昨年春から、「英語の授業は英語で行うことを原則とする」ことになりましたが、なぜ高校から始めたのでしょうか。どちらかといえば、中学のほうが英語で授業を行っている比率が高いと思います。挨拶などそれほど難しくありませんし、活動も生徒にやらせればよいわけです。高校のほうがハードル高いのではないでしょうか。高校が中学のほうを見習うべきかもしれません。
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