中学校新学習指導要領の全面実施

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中学校新学習指導要領の全面実施

平成24年4月1日から中学校新学習指導要領が全面実施されました。今回は、中学校外国語科改訂の趣旨等について文部科学省の解説資料を紹介するとともに、新学習指導要領を踏まえた指導のあり方について、文部科学省国際教育課外国語教育推進室平木裕教科調査官に伺いました。

平木教科調査官へのインタビュー

平木 裕 教科調査官

いよいよ「中学校新学習指導要領」が全面実施となりました。指導内容にほとんど変更がない一方で、授業時数は大幅に増加します。この現実をふまえて、中学校の先生方にはどのような心構えが必要なのか、どのような指導をしていけばよいのか、文部科学省国際教育課外国語教育推進室の平木教科調査官に聞きました。

◆ 中学校英語について

前段で「中学校新学習指導要領」に関する解説がありましたが、これを踏まえ、中学校外国語科の現状(新学習指導要領下での取組状況)について教えてください。
3年間の移行期間を経ていよいよの実施ですが、中学校は、外国語教育の本格的なスタートの時期であり、高等学校へつなぐ中核としての役割をになうことになります。しかし、このような「役割」に対する意識がまだ十分に浸透しているとは言えないのが現状であり、例えば次の点において課題があるのではないでしょうか。
・ 週3コマ相当から週4コマ相当へ授業時数増となったことについては、1週間の時間割上での「+1時間」という認識があり、昨年度までの3時間分をベースとしつつ、この1時間を何かプラスαのこと、例えば、「コミュニケーションの時間」や「活用の時間」などに充てている学校があるようです。このあと詳しくお話しますが、年間で140時間となったというトータルな視点から授業時数の運用を考え、各単元の指導計画において、旧課程では不十分だった言語活動を中心に充実させるなど、単元の「層」を厚くし、生徒のコミュニケーション能力を高める工夫をしてほしいと考えています。
・ 小学校における外国語活動での学びを生かした指導の工夫については、まだ十分になされているとは言えません。小中連携そのものは年を追って実施率が高まってきています。しかし、何のために連携をするのか、なぜ連携をする必要があるのか、といった意識は必ずしも高まっていないのではないでしょうか。外国語教育は中学校から本格的にスタートするとは言え、それは小学校で培われた「コミュニケーション能力の素地」の上に成り立つものであり、生徒の目線からも、また指導の面からも、小中のスムーズな接続を図る必要があります。

◆ 「中学校新学習指導要領」について

前の質問でも少し触れていただきましたが、増加した35時間の授業時間で、実際にどのような指導が期待されているのでしょうか。
35時間増えたという発想よりもむしろ、年間140時間(週4コマ相当)で3年間となった授業時数をどうするか、というスタンスで臨んでほしいと思っています。その上で、授業の中身に厚みを持たせ、各単元の指導内容を充実させるということです。今までは授業時数の関係から、単元の中でやむをえずカットしていた活動などを入れ、生徒にじっくり考えさせたり、練習させたりしてください。その際、既習事項をスパイラルに何度も繰り返して活用できるような指導を工夫するなどして、各単元に割り振った時間を十分生かしてほしいと思います。
 具体的な実践事例は、まだここで挙げることはまだできませんが、計画段階で次のような考え方を全県に示している教育委員会があります。
・ 年間140時間を各単元に割り振る
・ 各単元では、おおむね2~3時間程度内容の充実を図る余地が出る
・ 従来行っていた指導について、十分でなかった部分の層を厚くしたり、全くできていなかった内容を取り入れたり、といった工夫を   することで、単元を通して身に付けさせる力の向上を図る
例えば、埼玉県での取り組みなども参考になるのではないでしょうか
※参考資料

『埼玉県中学校教育課程編成要領』(平成21年度3月)(埼玉県教育委員会)
『埼玉県中学校教育課程編成要領』p.123,p125(抜粋)
p.123、p.125において「吹き出し」部分に具体的な活動が示されています。例えば、p.123であれば、「授業時数2時間が増えた場合の活動例」のところ、p.125であれば、「このことにより、4技能を関連付けた活動や既習事項を発展させた活動を行うことができるようになった」、「増えた2時間で辞書などを使い、自分の考えをまとめ、発表することが可能になった」あたりが分かりやすいでしょう。

4技能の統合的・総合的な指導とはどのようなものでしょうか。
すべての技能をまんべんなく毎時間行わなければいけないのではないか、と思われる先生がいらっしゃるようですが、「4技能の総合的な育成」というのは、1単元の中で行おうとするのではなく、1年間を通して考えたときに「すべての技能がバランスよく」身に付いていることが必要、ということです。ですから、単元ごとの目標としては、「書くこと」を徹底的に行うとか、「読むこと」を重点的に扱うということもありえます。大切なのは、年間の到達目標をしっかり立てて、そこからそれぞれの単元でどのような力を身に付けさせるのかを考えることです。
 例えば、文法であっても語彙であっても、単なる「知識」として終わらせるのではなく、「それをどうコミュニケーションの中で活用するか」を考えてください。「聞く・話す」だけでなく、「読む・書く」も、「筆者の意図を読み取り、自分の考えを発信する」「考えたり、調べたりして内容を組み立て、相手に理解してもらえるように書く」といった観点から言語活動をさせてください。スポーツをイメージするとわかりやすいと思います。1つのスキルだけで試合に臨むことはありません。「コミュニケーション」も同じです。いろいろなスキルを駆使して相手に伝えるために、習ったことを繰り返し使うことで、トータルに力が付いてきます。
総合的な育成が図られた4技能のひとつ、「書くこと」については、国立教育政策研究所では「特定の課題に関する調査」として調査していますが、調査結果から見て、評価される点、あるいは課題を教えてください。
まず、評価される点ですが、平成15年に出題したものと同じ問題を扱った結果、まとまった内容の文章を書く問題での無解答が減りました。また、書く文の数(全体の分量)が増加しています。一方課題としては、文と文のつながりを工夫するといった文章の展開の仕方が十分ではない、言い換えれば、まとまった論理的な文章を書く力が弱い、ということが分かりました。また、文法に関する知識を文脈の中でどのように活用したらよいか、という点も弱いですね。例えば、同じ英文を書くにしても、与えられた英文を「疑問文にしなさい」などの指示に従って書き換える場合に比べると、対話のながれに沿って与えられた動詞を用いて英文を書く場合では通過率がかなり落ちます。つまり、文法レベルのルールは理解しているけれども、コミュニケーションの場面でそのルールを自ら選択して活用するという点が身に付いていないわけです。
 そういった課題を受け、今後どういう指導をしたらよいか、という点については、「絵から物語を作ろう」「海外からのメールに返信しよう」といった「授業実践アイディア例」がいくつか示されていますので、参考にしてください。
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