一般財団法人英語教育協議会(ELEC)
文部科学省 協力

 

 

「日本・中国・韓国 英語教員研修の現状とニーズ調査」結果を発表

 

• 日本の教師が向上させたいスキルは「学習者の動機付け」「スピーキング指導」
• 研修を受けたい分野は「指導のための英語力」
• 忙しさが日本の教員のみ突出するも研修には意欲
• 既存の研修への満足感が低い日本の教師
• 7割以上がオンラインより対面を希望

 

英国の公的な国際文化交流機関であるブリティッシュ・カウンシル(所在地:東京都新宿区 駐日代表:マシュー・ノウルズ)は、日本・中国・韓国の公立学校で勤務する英語教師の研修の現状とニーズを把握するための調査をトリニティ・カレッジ・ロンドンに委託し、このほど、その調査結果を発表しました。
教員免許更新制の発展的解消を受け、2023年度から教員の資質向上に対する「新たな教師の学び」のガイドラインが設定されますが、教員の専門能力の維持・向上のための効果的な研修内容は今後ますます拡充が求められます。

 

調査概要

1. 調査期間    2021年11月から2022年4月
2. 対象      日本、中国、韓国の公立小学校・中学校・高等学校の教員
3. 調査方法    オンライン調査およびオンラインインタビュー(一部対面)
4. 有効回答数   7259(中国:6,469、日本:394※、韓国:396)内インタビュー回答者数106(中国:74、日本:11、韓国:20)

※日本の校種別内訳は、小学校教員21%、中学校教員28%、高校教員51%

5. 備考       ・オンライン調査は、地方自治体・関連団体(ブリティッシュ・カウンシルを含む)やソーシャルメディアを通じて協力を

依頼し実施した。

・調査項目は英語で作成され、その後各国の言語に翻訳され実施した。

 

調査結果より日本の教員に関する内容の一部
向上させたいスキルのトップ2は「学習者の動機づけ」「スピーキング指導」 「学習者の動機づけ」(63%)、「スピーキング指導」(60%)に、批判的思考や創造力などの「21世紀型スキルの指導」(44%)が続く。「学習者の動機づけ」は小中高とすべての学校種で高く、特に小学校は7割以上が重視している。中学・高校においては、「スピーキング指導」(中66% 高60%)のニーズが高い。

 

研修を受けたい分野は「教師としての英語力」
回答者の30%が今後研修を希望する分野として、「教師としての英語力」をあげた。具体的には「授業で英語使用をふやす授業実践」「教師自身の英語力を維持・向上する機会」などで、指導のための英語力が生徒の英語力を向上させる上で重要と捉える教師が多いことがうかがえる。2番目に多くあげられた分野は「指導力」で、「スピーキング指導」「授業運営」などの例があがった。

 

約9割が研修時間を確保できないと回答する一方、研修には強い意欲
教員研修に対する見解を尋ねる問いでは、90%が「研修時間を見つけることが難しい」と回答し、中でも「非常に難しい」は44%であり、中国の16%、韓国の18%を大きく上回り、日中韓の比較で、教師の忙しさが日本のみで顕著だった。一方、90%が「無料オンライン研修」、88%が「オンライン研修の新しい方法」に関心があると回答し、研修に対して強い意欲を示した。

 

7割以上がオンラインより対面研修を希望
オンライン研修の利点を理解しているものの、74%が「オンラインより対面研修の方がよい」と回答。インタビュー調査に応じた日本人教師は、オンライン研修に対しては様々な態度を示し、ほとんどが肯定的な面(利便性やコストなど)と否定的な面(他校の教員との交流の制限など)の両方を認めている。

 

研修の質に満足していない日本の教師日本の教師の61%が既存の研修の質に満足しておらず、小中高どの層も総じて同じ傾向。「既存」とは、教師が参加可能な研修全般を指す。教育制度が異なるため3カ国の単純な比較は難しいものの、「自国政府の教育機関が提供する研修」に対しては、中国82%、韓国79%に対して、日本の満足度は55%。(下表参照)

 

 

本調査の結果をうけて、ブリティッシュ・カウンシル英語教育シニア・マネージャー、河合千尋は次のように述べています。
「教員が研修に求めることは授業改善で、この点は研修手法が対面でもオンラインでも変わりません。オンライン研修については多くの教師が関心を示している一方で、「新たな方法を見つけたい」「オンライン研修を真剣にとらえていない」という声も複数あがっています。研修の企画側は、研修内容や設計が教師のニーズを満たしているのか、目的に沿っているのか、自問し、確認していくことが重要です。また、日本の教員の研修満足度が低い理由に関しては、教師の多忙さが関連しているとも思われますが、あくまでも推測にすぎませんので、更なる調査が必要です。」

ブリティッシュ・カウンシル駐日代表のマシュー・ノウルズは以下のように述べています。
「専門能力開発については国際的には多くの研究蓄積があるものの、新型コロナウィルスの拡大に伴って急速に進んだオンライン研修の現状については、まだ十分に理解されていない面もあります。本調査からは、オンライン研修に対する新たな工夫を求める声が多くみられた一方、7割の日本の教員が対面研修を希望しているという結果も明らかになりました。その他の結果も含め本調査の内容が、政策立案者や英語教員の専門能力の開発に携わる関係者にとって有用な参考資料になろうと思います。」

 

アンケート調査結果より、日本の教育関係者に関心が高いと思われる部分についての詳細は、以下のサイト内の 「日本向け要約」(PDF)でご覧ください。 https://www.britishcouncil.jp/programmes/english-education/updates/cpd-research

(2022年12月15日   ブリティッシュ・カウンシル)

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