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Column

高校生のための理系英語

2017/08/25

東京大学大学院工学系研究科 上席研究員
森村 久美子

普及が加速する自動運転車

皆さんは自動運転車 (autonomous cars) という言葉を聞いたことがあるでしょうか。まだ運転免許 (driver’s license) を持っていない高校生の皆さんにはあまり関心がないかもしれませんが、16歳以上の人口の約74%を占める運転免許保持者の間では自動運転車は大きな話題となっています。

 

近年、高齢者によるアクセル (accelerator) とブレーキ (brake pedal) の踏み間違えや高速道路 (expressway) の逆走 (driving into oncoming traffic) による事故のニュースが増え、判断能力の衰えた高齢者の運転についての不安が高まっています。運転手自身も負傷したり亡くなったりする可能性がありますが、普通に道を歩いている人が巻き込まれる可能性も高いのです。警察庁が示すグラフによると近年、高齢者の自動車乗車中の事故死が目立っていることがわかります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

※警察庁「平成26年中の交通死亡事故の特徴及び道路交通法違反取締り状況」より

 

 

こういった事故による不安を解決するためのひとつの方法として自動運転車の普及が加速しています。 1)自動運転車とは大きく3段階に分かれます。

 

1. 車が障害物に出会ったときに自動的にブレーキがかかる。

2. 走行時に速度を調節してくれる。

3. 自動的にハンドルを切ってくれる。

 

この3つが可能になれば、極端に言えば人間が車を運転する必要はなくなるのです。第一段階に限っていえば2016年に販売されている車の50%に自動ブレーキ装置 (automatic emergency braking system) が付いています。

 

グーグル(Google)では2015年夏にハンドルもアクセルペダルもブレーキペダルもない自動運転車を公道で走行させる予定でしたが、カリフォルニア州から手動 (manual driving system) でも運転できる形での走行を求められたため変更を余儀なくされました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Googleが開発した自動運転車Waymo

 

車は一台だけうまく制御されていても道路には他の車も走っています。同方向に走っている他の車との車間距離 (distance with other cars) 、左右の関係、追い越し追い抜き(overtake)なども問題になりますが、逆方向(opposite direction)から来る車との衝突回避、道の譲り合い、あるいは横から飛び出してくる他の車や人間、その他の動くもの(自転車、バイク、三輪車、乳母車、スケート)や動物をいかに感知して衝突を避けるかというのも大きな課題になります。

 

2)自動運転車が事故を起こした場合、運転席にいる者に責任があるのか、車メーカーに責任があるのかなど、自動運転車が公道に導入された場合は新たな法の整備も必要になってきますし、社会的なコンセンサスも必要になります。 しかし自動運転車の最大の販売者であるテスラモータース (Tesla Motors)によれば2023年には完全自動化された車が公道を走るようになり、そのうち人間が運転する車が法で規制される時代がくるだろうとさえ言われています。

 

未来の自動車の形の可能性としてもうひとつ挙げられるのが電気自動車 (electric vehicle) です。

 

3)ガソリンの内燃機関による自動車はガソリンを燃やす際に排出するCO₂やNO₂が大気汚染や騒音などの環境問題を引き起こしてきました。 電気自動車は電池 (batteries)あるいは充電(charging)で走る場合が多く、ガソリンの燃焼によらないためCO₂やNO₂を排出しない、エンジン音が静か、エネルギー効率 (energy efficiency) が高いため費用が安くつくなどの長所があります。このように言うと良いことづくしのようですが、ガソリンが数分ですぐに補給 (replenish) できるのと異なり燃料電池 (fuel cell) の充電には時間がかかる、充電所がまだガソリンスタンドほど整備されていないという欠点があります。このため深夜余剰電力 (surplus power in the midnight) や太陽電池 (solar power) を併用するなどの方法が考えられています。電気自動車はこれからますます普及していくことでしょう。

 

電気自動車はコンピュータ制御(controlled by computers)の自動運転と相性がよく、今後ますます双方が発達していくのは間違いありません。

 

 

 

コラム記事の下線部分の英訳例

 

 

1)Autonomous driving can be generally divided into three controls: 1. automatic braking when a car encounters an obstacle; 2. automatic speed adjustment; and 3. automatic steering. If these three devices control the car, a human driver is no longer needed.

 

2)If autonomous cars are to be allowed on public roads, we need to clarify the laws to address matters such as who is responsible when a self-driving car is involved in an accident: Is it the person in the “driver’s” seat or the car manufacturer? There also needs to be a social consensus about their use.

 

3)Gasoline-powered internal-combustion engines are responsible for environmental issues, such as noise and air pollution, because they emit carbon dioxide and nitrogen oxide.

 

 

 

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