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英語で行う高校英語の指導の在り方と授業づくり(2)

~生徒のやる気を引き出す高校英語指導の視点と仕掛け~

 

吉住 香織(よしずみ かおり)

國學院大學非常勤講師

 

 

平成25年度から年次進行で実施されている高等学校新学習指導要領において、「英語の授業を原則として英語でおこなう」こととなっている。今年のELEC夏期英語教育研修会の最終日の8月16日には、「英語を教える」から「英語で教える」授業へ転換することの意義と方法について理論と実践という観点からの研修がなされた。

 

午前は、吉住香織氏(國學院大學非常勤講師)が「生徒のやる気を引き出す高校英語指導の視点と仕掛け」と題した講座を、午後には法政大学教授の寺内正典氏が「リーディング理論に基づく効果的な指導を考える」というテーマの講座を担当した。最新の言語学や外国語としての英語教授法に裏打ちされた授業のあり方について、現職英語教員らが知見を得る機会となった。

 

 

生徒と英語の出会いの場を演出するために

 

吉住氏は長年公立高校で教鞭をとられていたが、2年前に退職。英国のInstitute of Education(ロンドン大学教育学専門大学院)の英語教授法の修士コースで学び、帰国後は大学に活動の拠点を移したばかり。今回の講座では、英国留学で得た最新の知見も紹介しながら、生徒の学習意欲につながる高校の英語授業指導について具体的な提案をされている。

 

吉住氏が重視するのは、英語習得に効果的と言われる第二言語習得の認知プロセスを実際の英語授業指導にどのように活かしていくか、という点である。具体的には、input → intake → outputという言語習得プロセスにおいて、

 

1) やりとりを通して生徒の「関わり」や「気づき」を引き出すinput を十分かつ効果的に与えること、
2) 場面と文脈を意識したmeaningfulな口頭練習や言語活動を十分行ってintakeさせること、
3) 沢山の時間はとれなくても、足場掛けや支援をしながら何らかの形で学んだ事柄をoutput できる機会を設けてその必要性を意識させること、

 

がポイントとなる。

 

授業設計では、授業だからこそできる活動を絞り込み(例:音読や協同の重視)、「指導の狙いと活動間のつながり」を意識して段階的に指導手順を考えることが重要として、その際の主な留意点に

 

1) 到達目標を意識した各段階の活動のつながり
2) 4技能をいつ、どのような活動に取り入れるか、技能統合と焦点化
3) 音、意味、場面、文字の提示の手順、

 

などをあげている。

 

また吉住氏は、「教材から指導目標を考える」必要性を指摘する。「教科書の内容を様々な視点から分析し、理解し、メッセージや特徴を掴む」こと、「教材を教師、生徒、筆者、教員個人の4者の視点で読みなおし、そのうえで生徒の実態を踏まえて到達目標を設定する必要があります」と同氏。教科書「を」から教科書「で」、そして教科書「を越えて」、という観点から、最終的には教材を通して生徒に何を教え、何を伝えるかが大切である、と強調した。

 

さらに、教師が授業の様々な場面で学習者に話しかけるteacher talk もまた、学習者の英語習得を促す上で大きな役割を果たす、という。teacher talkは生徒の言語熟達度に応じて教師が話す英語であり、指示や説明、発問、フィードバックなどさまざまな機能をもつと同時に、生徒にとって「重要なinputである」、と同氏。だからこそ英語教師は、teacher talkを適切に調整し、その質を向上させる必要がある。具体的な調整の方法として、頻出語彙や既習事項、単文を利用した言い換えや単純化、必要な語句を補う精緻化(elaboration)など言語的な修正に加え、意味交渉を含むやりとりの中での繰り返しや強調、ビジュアル・エイズやジェスチャーの利用といった会話的な工夫も紹介された。

 

このように、教師が授業時に行うさまざまな指導行為に、学問的な意義づけや意味づけがなされ、その内容を工夫しながら質を上げていくことで学習者のやる気や言語習得につながれば、教師がおのれの活動に自信や確信を抱く、という効果も期待されるであろう。

 

講座の最後に吉住氏は、「日本人の英語教師(JTE)がnon-native speaker(NNS) だからこそできることは何か」と受講者に問いかけた。日本人が犯しやすい誤りの予測や日本語との相違点をふまえた指導、生徒への励ましなど、NNSだからできる事は色々あるが、中でも英語のlearnerかつuserとして生徒の「ロールモデルになること」の意義を吉住氏は強調する。

 

「先生が英語を使う姿を示し、また学習者として苦労した体験も話してほしい。生徒の身になって英語学習経験を考えられる利点を活かした指導こそ、JTEに求められている役割ではないでしょうか」と同氏。最後に、コミュニケ-ション力の向上をめざし生徒と英語の出会いの場を提供する役割を担うJTEだからこそ、自らがまず英語を使おうとすることが必要である、と吉住氏は結んだ。

 

(文責:編集部)

 

(2014年9月掲載)

 

 

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