「質問する力」はディベート、ディスカッション活動の大前提

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~「質問する力」はディベート、ディスカッション活動の大前提 ~
津久井 貴之(つくい たかゆき)お茶の水女子大学附属高校教諭

小学校において新学習指導要領が全面実施され、第5・第6学年で「外国語活動」が必修化されたのが平成23年度からだが、この外国語活動を経験した生徒が、いまでは中学生となっており、来年春には高校入学の時期を迎えることになる。
その一方、平成25年度から年次進行で実施されている高等学校新学習指導要領において、「英語の授業を原則として英語でおこなう」こととなっている。つまり、小学校で英語に触れた生徒が、高等学校で英語による英語の授業を受けることになり、その成果が注目される。

平成26年度のELEC冬期英語教育研修会から、授業における教師と生徒の英語使用について、津久井貴之氏(お茶の水女子大学附属高校教諭)の講座内容をレポートする。
津久井氏は、群馬県の公立学校で教鞭をとっていたが、2012年春に県教育委の指導主事に抜擢された。昨年春からは東京都内の国立附属高等学校で再び教鞭に立っている。2011年にパーマー賞(最も優秀な英語教員を表彰する伝統のある賞)を受賞した津久井氏だが、文部科学省の映像資料(DVD)の高等学校の部にも登場している。

※高等学校編 新学習指導要領に対応した外国語活動及び外国語科の授業実践事例映像資料3に授業風景が収録されている。指導案もダウンロード可。
http://www.mext.go.jp/a_menu/kokusai/gaikokugo/1322194.htm

「英語による授業」の問題点とは?

英語の授業は英語ですべき、との立場で英語教育に取り組んできた津久井氏だが、指導主事として県下の数多くの中学校や高等学校で英語の授業を見てきたことで、その問題点や改善点も見えてきたという。
研修講座では、「教科書から展開する表現活動を定着させるための工夫」と題し、高1英語でもペアによるインタビュー活動を通して、どのようにして生徒たちに「質問する力」をつけさせるか、自らの授業実践例を示しながら話を展開した。

まずは、受講されている先生方にペアを作ってもらい、インタビューする人とされる人それぞれのロールを決め、自由なテーマで3分間語ってもらうことから講座がスタート。聞き耳を立てていた津久井氏が注目したのは、インタビューの「はじめ方」と「終わらせ方」だ。
もちろん答えは一つではないが、高等学校レベルでは教員がコントロールするのではなく、生徒にきちんとした対応をさせるべきだ、と津久井氏。例えば、はじめ方では greetings (挨拶)からはじめるのが一般的だ。” Nice to meet you. I am …...” や “My name is …...” などだ。終わらせ方も同様に、 “Thank you for answering my questions and this is the last question …” とか、
“I enjoy talking to you. I enjoy sharing time with you, Thank you.” などだ。

津久井氏が、中学校や高等学校で生徒のインタビュー活動を観察して感じるのは、小学校英語が始まったことのプラスの影響かもしれないが、質問に答えることに慣れてきていることだ、という。ただ、答えがひと言、ふた言で、会話が続かないという。例えば、What color do you like the best? と先生が質問すると間髪を入れず “Blue.” とか “Red.” という単語が生徒から返ってくる。相手からの質問には応じることができても、自分から追加の情報を付け足したり、相手に同様の質問を投げかけたりするストラテジーを身に付けてきていないため、話がその先に発展していかない。「コミュニケーションをしようという態度や習慣、相手への意識が大切だ、というだけでは生徒は何をしてよいか分からない」と津久井氏。教師による段階的な指導や具体的な支援が必要なのだ。

生徒に不足している「聞く力」と「質問する力」

また、「聞く力」、「質問する力」も不足しているという。
その背景には、(1)日本では質問する文化がない、(2)質問するには相手の言っていることがきちんと聞けていないと無理である→つまりリスニング力が不足している、そして(3)疑問文を即座に作って表現する言語操作上の困難さ→文法、文型の理解不足、などがある、と津久井氏は分析している。
現在、授業でdiscussion やdebate が導入されている時代だが、「現実には、discussion もどき、や debate もどきの活動で終わってしまっていることが多いのではないか。相手の主張のポイントを聞き取り、質問できるかどうかが discussion や debate が成立するための第一歩でもあり大前提」と津久井氏は力説する。

また、ワークシートの活用はそれとして、ワークシートに依存しすぎている気配すらあるが、それ以上に津久井氏が気になっていることは、いまの生徒たちが授業中、ノートを取らないことだ、という。津久井氏は、担当している生徒たちには、最初は自己流でもよいので、自由な形でノートを付けさせているという。
「好きなスタイルでノートを取らせ、本人が了承すれば、他の生徒とも共有させる。生徒のノートを見ることで、教師の側の不十分さが見えてくる。自己の振り返りにもなり、生徒へのフィードバックもしやすくなる」という。

英語を英語で教えるのであれば、ことさら気になることは、話された言葉がその場で消えてしまい、生徒も教員も記憶できないことだ。
「生徒が理解できていないのであれば、その時にフィードバックすべきだ。そうしないと次の授業でフィードバックしようとしても、生徒は忘れてしまっていることが多い。生徒からの質問には日本語で答えることで構わない。生徒が理解しないことには意味がないからだ」と津久井氏は断定する。「すべて英語で、といっても生徒に伝わらないのであれば本末転倒。伝わる英語を用いるのは大前提だが、例えば、推論や分析など深い思考を促したり、論理的な表現の仕方について生徒同士話し合ったりする場面の目的は何か、教師が英語を使うことではないはず。この場合は、ポイントをきちんと日本語で伝えてあげるべきでしょう」と津久井氏。

講座の最後に津久井氏はあるエピソードを紹介している。英語教師を目指して現在大学で学んでいるある教え子から、近況報告の手紙が届いた。その中で彼女は、大学に入り、学習を含め、なにからなにまで自分で考え、自分で行動しなければならないことに戸惑ったと書いていた。高校時代、恩師である津久井氏に懇切丁寧な指導を受けていた時と、大学での学習環境の大きな相違に戸惑ったというのだ。この手紙を読んで津久井氏は、「ワークシートからノートのチェックなど、何から何まで教師が生徒のために準備し用意することが本当に良いのかどうか」と自問したという。「自律した学習者」に育てることが学校教育の大きな目標である以上、「ねらいをもって、梯子を外すことも必要ではないか」と津久井氏は自戒の念も込めて語った。

(文責:「えいごネット」編集部)

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