外部専門機関と連携した「英語教育推進リーダー中央研修」

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2年目に入った「外部専門機関と連携した英語指導力向上事業」における「英語教育推進リーダー中央研修」事業

文部科学省(以下、文科省)が外部専門機関に委託して実施している現職英語教員向けの研修事業(「英語教育推進リーダー中央研修」)が2年目に入った。

2013年12月、文科省は「グローバル化に対応した英語教育改革実施計画」を発表し、英語教育全体の抜本的充実を図ることとなったが、英国の公的な国際文化交流機関であるブリティッシュ・カウンシルとの連携事業も、その一環となる。

初年度の2014年度には、全国から推薦された合計約500人(小学校200名、中学校200名、高等学校100名)が参加し、研修を経て、文部科学省から「英語教育推進リーダー」として認証される仕組みだ。

小学校5、6年での外国語の教科化、中学校における英語授業を基本的に英語で行う、など、2020年度からの全面実施となる次期学習指導要領改訂において打ち出される英語教育改革が進む中で、小学校教員及び英語教員の資質の向上に向けた研修の重要性が高まっている。今回の「英語教育推進リーダー中央研修」事業が注目されるゆえんだ。

それでは、今回の研修事業の特徴を見ていこう。

今回の研修は、研修の目的はもとより、形態や研修内容(プログラム)そのものが、従来の研修と抜本的に異なっている。例えば、中・高等学校教員対象の従来型研修の課題として、参加教員自身の英語指導力は一定程度の向上が見込まれるものの、研修の成果を他の教員や学校に普及させるのが困難なことが指摘されていた。また、新しい英語教育の在り方に対応した研修内容や、実際の授業や学習評価に直接結びつく実践的な内容を求める声も多く聞かれた。

そうした声を踏まえ、今回のリーダー研修は、中学・高等学校においては、学習指導要領及び新しい英語教育の在り方の趣旨に沿った指導や評価が実現できるようになることを目指している。例えば、以下は中・高等学校教員対象本研修の内容である。

  • 生徒の総合的なコミュニケーション能力の育成
  • 英語を用いた言語活動が中心となった授業
  • 生徒の英語学習に対するモチベーションの向上
  • 生徒の英語による言語活動が中心の指導方法
  • 基本的に英語で行う授業

また、本研修においては、ワークショップ形式で体験的に学ぶことと、モニタリングやデモンストレーションの仕方など、具体的な指導法に焦点を当てて研修を行うことにも配慮されている。った。

この研修事業で講師を務めるのは、ブリティッシュ・カウンシルで、実践的な英語授業における国際的な教授資格であるDELTA(Diploma in English Language Teaching to Adults、ケンブリッジ大学英語検定機構が授与する英語教授に関する国際資格で大学院修士号と同等資格として認定)保有者のベテランの専門家チーム。もちろん研修はすべて英語で実施されている。った。

創立80年以上の歴史を持ち、長年にわたり世界中の国々で英語教育に関わってきたブリティッシュ・カウンシルだが、今回の研修事業向けの研修用教材を特別に開発した。その作業には、文科省の教科調査官らも企画段階から関わっている。った。
研修内容も、授業運営のための教室英語の使い方から4技能それぞれの教授法、教材の効果的な活用法、語彙、表現、文法の指導法から生徒のモチベーションの向上など幅広いテーマをカバーしている。小学校では、歌や絵本の活用など、世界の小学校で実践されている有効な手法を扱うともに、児童の発達段階に十分に配慮した内容としている。ブリティッシュ・カウンシルの担当者は「本研修では、(情報を共有するだけではなく)言語活動の実際を参加型で体験することを重視しています。言語活動を実践するためには、教員がまず実際に体験し、様々な側面を【体感】することが重要で、「授業が変わる」という最終的な目標にはこのことが欠かせません」と言う。

本研修事業の最大の特色は、カスケード方式と呼ばれる形態。カスケードとは「伝搬」という意味で、研修を受講した教員が自己の授業改善を経て、他の教員に研修をすることで、成果を波及させていく仕組みである。毎年推進リーダーが増えていくと、「講師」となる教員が増えることになるので、それぞれの教育委員会や学校で、自律的に教員研修を実施することが可能となる下地ができるというわけだ。

1年間の研修期間中、受講者は

  1. 自己の授業改善のための集合研修、
  2. ①の内容を踏まえた実践(授業実習)、
  3. 自らがトレーナーとなって地元の教員に研修を施すための集合研修、
  4. ③の内容を踏まえた実践(研修実習)

という4段階の研修を受ける仕組みとなっている。

受講者が一堂に会して研修を受ける集合研修は年2回、それぞれ5日間にわたって、茨城県つくば市の教員研修センター等の会場で実施され、宿泊も共にする。その際、25人を1グループとし、各グループに対し英語講師1名が配置される。集合研修以外の期間は、それぞれに授業案の作成及び研修内容を実践に移すことが課せられる一方で、オンライン教材を使った英語力向上のための自己研修も奨励されている。また、受講者ネットワークがオンラインで構築され、情報共有がなされるとともに、ブリティッシュ・カウンシルの担当講師からのアドバイスを受けられる仕組みも整備されている。

こうした研修を受けた受講者は、所属教育委員会の支援のもとに、各地域の小学校における英語教育推進の中核となる教員(以下、中核教員)及び中・高等学校の英語教員20名から25名に対し8テーマ14時間の研修実習を行うことが義務付けられている。小学校教員については、この中核教員が、各学校で研修を行い、最終的には5カ年で40万人の教員が研修を受けることなる。
英語で授業を展開されている高等学校の先生たちにとっても、専門家による英語の研修は刺激的だったようだ。高校グループの受講者からは「文法を(英語で)教える活動は本当に楽しいものでした。私の生徒たちも必ず楽しんでくれると思います。ほとんどの先生は、コミュニカティブな方法で文法を教えるということに課題を感じていると思います。今日、そのための方法を手に入れたと思います」と感想を寄せている。また小学校グループの受講者からは、「実践的なものが、たくさん体験できましたし、クラスルームイングリッシュや、ALTとの打ち合わせの表現は、今までに知らなかったものが、たくさん得られました」との声も聞かれた。

教員研修の成果をいかに測るかは難しいテーマだが、初年度の中央研修に参加した小学校教員へのアンケート結果によると、研修前に授業で「活動の指示をほとんど英語で行っている」と回答した教員は18パーセントであった。それが研修後には、「活動の指示をほとんど英語で行おうと思う」と考える教員が60パーセントにもなっている。

本研修を担当したある講師は「受講された先生方と話をしたり、授業ビデオを拝見したりすると、すでに変化が起こっていることを感じます。変化の大きさは先生によるかもしれませんが、生徒たちが英語で話したり書いたりするだけでなく、本当に言いたいことを表現するということを強く意識し授業をされています」とコメントしている。

このように、受講した教員が自らの授業改善に研修成果を反映させることは当然だが、自らがトレーナーとなって、集合研修で学んだ内容を、地域の英語教員に効果的に体験してもらえる場を設定できるかどうかが本プロジェクトの成否を分けるところだろう。そのためには本人の努力だけに頼るのではなく、所属する教育委員会や学校の管理者からの全面的な協力・支援が不可欠となろう。

すでに各地で研修実習が進められているが、参加した教員は「自分の授業に活かさないといけないと強く思いました。教室英語を使い、生徒が英語を話す機会を作り出そうと思います。」と前向きな感想を寄せている。またトレーナーとして研修を実施した中央研修参加教員も「受講者がみんな協力的でした。自分の英語の授業でもっと英語を使うべきだということに気気付いてもらえました。一日中英語で研修を受けたり、英語で話をしたりするという、この研修の雰囲気を楽しんでもらえました。」と手応えを感じている。

文科省としても、初年度、今年度の研修実績及び受講者への意識調査結果、受講前後の授業案の分析などを通じて、受講者の変容及び研修の効果を測り、3年度目にあたる28年度の研修事業の見直し、改善に繋げたい、としている。当然ながら、2020年度から全面実施となる次期学習指導要領の改訂を見据えて、小・中・高等学校における指導体制の整備が図られる展開となっていくことは間違いないであろう。

(文責:「えいごネット」編集部)

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