世界で活躍する人にインタビュー 世界で活躍する新進気鋭の進化生物学者

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世界とつながる人にインタビュー
世界で活躍する新進気鋭の進化生物学者
インタビュー:小薮 大輔さん(こやぶ だいすけ)進化生物学者

東京大学総合研究博物館で哺乳類の頭部進化の研究をしている小薮大輔さん。学者というと研究室で文献や資料に埋もれているというのは、古いイメージ。海外の学者と情報交換しながら共同研究をすすめる小薮さんに、研究活動にいまや欠かせなくなった英語力の必要性や世界の人と一緒に研究する面白さなどについてお聞きしました。

こどものころからなりたかった生物学者

小学生のころは恐竜学者になりたかった。山や川で遊ぶのが好きだった。生まれ育った兵庫県の川原では生き物の痕跡が残っている化石が拾えることがあって、昔の生き物や骨に興味がわき、野外で研究する恐竜学者になりたいと思うようになった。
朝日新聞の記者だった本多勝一氏の海外ルポに感化され、海外を飛び回るジャーナリストになりたくなった時期もあったが、氏が創設に関わった京都大学探検部に入部して再び野外研究(フィールドワーク)に気持ちが戻る。
アメリカでの留学を経て専門は恐竜から、我々ヒトが生物としてどのように進化してきたかに興味が移る。ヒトと哺乳類の骨や化石の研究へ進み、進化生物学者になった。

進化生物学とはどんな研究か

進化生物学とは生き物の進化の歴史や一般法則を明らかにする学問。「脊椎動物の頭の骨がどのようにして今のように進化したのかを調べています。」と小薮さん。我々の祖先である魚類の頭の骨は100を超えるパーツからできていたが、爬虫類の一群から哺乳類が進化するなかで頭の骨のパーツはどんどん減って、ヒトの頭の骨は20数個くらいに落ち着いた。ではなぜ、どのように減っていったのか、それを研究しているそうだ。またこの研究には沢山の動物の標本が不可欠で、世界各地の博物館に保管される標本を見たり、化石を掘ったり、野外調査で採集した動物の標本を調べたりすることも仕事とのこと。

英語との本格的な出会い

初めて本格的に英語にふれたのは、大学3回生のとき。京都大学と単位互換できる交換留学プログラムでアメリカのカリフォルニア大学バークレー校に1年間留学した。アメリカの大学生はとにかく授業をまじめに受けるし、授業を受けるための予習にあたる宿題の量も半端ではなかった。
授業を一回聞くだけでは全然理解できないため先生の授業を録音し、毎日図書館で復習した。ほとんどの授業で宿題として教科書を200ページ以上読んでくるよう毎回いわれた。泣きべそをかきながら勉強した。
「初めの一ヶ月は、勉強が終わって寝ようとベッドに横たわると、頭がぼんやり熱をもっていて英語で頭がオーバーヒートしている感じがしました。」
小薮さんの母親は英語の仕事をしていたこともあり、もともと子どものときからYMCAで英会話教室に行ったりしていたので、英語への嫌悪感は少なく、自分ではできるつもりでいたのに、アメリカの大学に入って、英語でこんなに苦労するとは思わなかったという。「それでもだんだん慣れてきて1年も経つとだいぶ出来るようになりました。」
その後大学院に進学。大学院博士課程を修了した2011年から約2年間は、スイス・チューリッヒ大学の博物館で研究員として研究生活を送った。

学者の世界では英語が必須

生物学者として英語は本当に必要だと小薮さんは言う。「学者は自分が発見したことを発表しないと研究として認められない。それも英語で論文を書いて研究者コミュニティが運営する学術誌に発表しなくてはダメなのです。論文として半永久的に残ることで分野の研究者はそれを評価したり、批判したりできる。学会発表では不十分なのです。生物学、物理学、化学のような分野では少なくとも英語で論文を書かないとほとんど研究成果として認知されません。」
「ただし英語の論文は、形式は決まっているし、論文で使う単語もある程度傾向があるので、参考書を読んだりしながら、自分で英語論文の書き方を勉強しました。」と振り返る。
「英語で論文を書いて発表すると、『君の論文はよかった』と直接言われたり、自信作の論文がいろいろなところで引用されたり、コメントされたりする。このように他の人の研究に自分の論文が波及するのを実感できるのが、また研究のやりがいになっていきます。」と語る小薮さん。
この波及するスピードが英語の論文は速いという。
学界のグローバル化はますます進んでいて、小薮さんも現在、オーストラリア、スイス、ドイツ、スペイン、アメリカ、イギリス、フランス、韓国、ベトナム、アルゼンチンなど様々な国の学者と共同研究をしている。日本国内だけでは研究はこなせない。このような共同研究でも英語は必須だ。「研究で闘うのも、仲良くなるのも英語。ぼくらの世界は英語で回っているんです。もしかしたら、経験10年の学者なら理系のほうが英語ができるようになっているんじゃないかな。」

研究や学会で去年は延べ2ヶ月海外出張があったという小薮さん。
「日本では必要な情報をかなり日本語でアクセスできる便利さがあり、それで英語は勉強しなくてもすんでいました。しかし、これからはそうはいかないでしょう。それに英語も読み書きだけなく、書く、喋るという能力も、必要になります。日本人だけで研究をして、日本人だけを対象に発表するというように、ひとつの国だけで研究が完結する時代は終わりつつあります。できるだけ国際的に研究し、発表をするというのが学者の世界の流れだからです。英語ができないとどうしても世界の第一線に食い込めないのです。」と小薮さんは英語の重要性を説く。
メールも論文も英語で毎日届く小薮さんにとって、日本にいても英語は日常語になっているようだ。

(文責:編集部 笠原)

Nature Communicationsに掲載された論文

「哺乳類頭蓋骨のヘテロクロニー(形成タイミングの進化的改変)は、モジュール的進化および頭蓋発生様式と脳サイズの相関の存在を明らかにする」

Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America(米国科学アカデミー紀要)に掲載された論文

「ヒトをはじめとする哺乳類の頭蓋骨の進化的起源を解明」

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