世界で活躍する人にインタビュー 国際社会に貢献するチェンジメーカーを育てる

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世界とつながる人にインタビュー
国際社会に貢献するチェンジメーカーを育てる
インタビュー:小林 りん(こばやし りん) さん

1974年、東京都出身。国立附属高校を中退し、経団連から奨学金を受けてカナダの全寮制インターナショナルスクールに留学。卒業後は、東京大学経済学部で開発経済を学ぶ。モルガン・スタンレー証券やベンチャー企業経営などをへて、2003年、国際協力銀行へ転職。05年に米スタンフォード大国際教育政策学修士号を取得。06年から2年にわたり、国連児童基金(ユニセフ)でフィリピンの貧困層教育にかかわる。09年4月からインターナショナルスクール・オブ・アジア軽井沢(ISAK)設立準備財団の代表理事に就任、14年8月に開校。

2014年8月に開校したインターナショナルスクール・オブ・アジア軽井沢(ISAK)の代表理事である小林りんさんに、ご自身の留学体験やISAK設立に対する思いをお聞きしました。

2014年8月に長野県の軽井沢で「ISAK インターナショナルスクール・オブ・アジア軽井沢」が開校した。日本初の全寮制インターナショナルスクール(3年制)で各学年定員約50名の少人数制、その7割が海外からの留学生である。現在、日本と、28カ国からの留学生、計98名の高校1、2年生が共に学んでいる。授業のカリキュラムは、各国で大学入学資格として認められている国際バカロレア(IB)ディプロマ・プログラムを中心としており、高校卒業後の進路は、国内外のあらゆる大学に門戸が開かれている。「アジア太平洋地域そしてグローバル社会のために、新たなフロンティアを創出し変革を起こせるチェンジメーカーを育てる」がミッションだ。

日本初の全寮制のインターナショナルスクール

ISAKは、日本で初めての全寮制インターナショナルスクールで、学校教育法第一条に規定される日本の高等学校だ。何もかもこれまでにない新たな挑戦をしている学校で、高等学校卒業の資格がとれるということで教育界の注目を浴びているが、小林さんは「ただ単にインターナショナルスクールです、日本の学校ですということではなく、わたしたちのミッションとしては、日本だけではなくて、特にアジア太平洋地域を中心とした世界の舞台で新しい変革を起こす人を輩出していくことです」と熱く語る。

各学年の生徒は約50人で、全校生徒を合わせても約150人、学校にしては少人数に感じるが、始めるのにあたり、この人数にした理由を聞いた。「お子さんの学力面だけではなく、精神面やいろいろな人間関係も含めて、どの程度の人数が理想とされるのか考えた際、進化心理学のダンバー教授(※)の提唱する公式に出会いました。『典型的な社会集団の中で人間が築く個人関係の範囲は100人から231人の間になる』というものです。高校のときに留学したカナダの全寮制高校が200人でしたが、それでも何人かドロップアウトがでたのですね。もうちょっと小規模から始めたいなと思って、これから200人くらいに大きくなっていけばいいなとは思います」

クラスは、日本人が3割、日本以外のアジアから4割、残り3割がアジア圏外の学生で構成される。まさにグローバルの縮図のようだが、「多様性といっても、ただたくさんの国籍を持った人がいればいいというものではなくて、社会的、経済的なバックグラウンド、宗教観や歴史観など、いろいろな意味での多様性が内包されているような教室にしていきたいと思っています」と小林さん。多様性を学ぶための環境を作り上げている。
そのためISAKでは、どんな環境の子でも能力や志が高ければ入れるよう、全体の約半数の生徒に対し、年間350万円の学費に対する部分奨学金または全額奨学金を用意している。

※ロビン・ダンバー(Robin Ian MacDonald Dunbar)。英国の人類学者。安定した社会関係を結ぶことができる集団の数を定式化した。人間集団の「ダンバ―数」は平均で150とされる。

自身が学んだ国際バカロレア(IB)を導入

ISAKでは、世界各国で大学入学資格として認められている国際バカロレア(IB)ディプロマ・プログラムをカリキュラムに取り入れている。国際バカロレアは、3歳~19歳まで年齢に応じて初等教育・中等教育・ディプロマ資格の3課程があり、課程修了時に修了試験を受ける。ディプロマ資格プログラムの公式教授言語は原則として英語、フランス語またはスペイン語。母語も必修科目とする。インターナショナルスクールや各国の現地校の卒業生に国際的に通用する大学入学資格を付与する仕組である。欧米諸国を中心とする多くの国々の高等教育機関において、大学入学資格として幅広く受入れられている。

小林さんは、高校1年生のときに日本の高校を中退し、カナダの全寮制インターナショナルスクール、UWCピアソン・カレッジへ留学、そこで国際バカロレアのディプロマ資格を取得している。ディプロマは6教科(第一言語、第二言語、人文科学、自然科学、数学、芸術)のうちそれぞれから一科目を選択し、レベルは、上級コース、標準コースと選ぶことができる。生徒側は、組み合わせができるので選択肢は幅広い。
国際バカロレアのカリキュラムについて「わたしが実体験として感じたのは、一科目一科目をすごく深く勉強するということです。わたしは経済の上級コースを選択したのですが、2日間も試験があって、選択式の問題が終わった後に、例えばサプライサイドエコノミックスについての小論文があり、更に時事問題があって、それを分析して経済学的観点から述べよ、何百ワード。というところまで問われるのです。小手先の経済学の知識だけでは答えられないような試験でした」と回顧する小林さん。深く勉強しなければ答えられない問題を前に徹底して考え抜く力を養ったという。

国際バカロレアの認定校は、世界140以上の国・地域において4,380校に上り、日本における認定校の数は35校(2016年1月時点)。政府は、2018年までに国際バカロレアの認定校を200校まで増やす方針で、公立校を含めて取り組みが広がっている。また、カリキュラムの一部の科目を英語とともに日本語でも学ぶことができるようになり、試験も日本で受けることが可能になる。

日本でも徐々に国際バカロレアの導入が進もうとしているが、小林さんにとってIBを導入するのは規定の路線だったようだ。「わたしたちの輩出したい人材像と絡んでいます。わたしはよくT-Shaped と言うのですが、リベラルアーツ的にどんな分野のこともきちんと知っていながら、自分の軸がある人が学問にも必要だなと思っています。これからはT の上のバー、つまり理系、文系と分けるのではなく、領域を超えて考える力がすごく大事だと思います。例えば、政治家だけれども科学がわかるとか…」
領域を超えていくには、これまでのような理系や文系にわける考え方や、試験のために5教科をある程度勉強するというやり方を脱していくことが学生には必要になる。ご自身の体験から「ひとつやふたつ自分の興味のある分野、情熱のある分野を深く掘り下げていくことが大事だと思うのです。そうすると国際バカロレアの場合は、6つのグループがありますし、理系でも文系でも、その中で自分が掘り下げたいものを上級コースみたいなかたちで、大学にいっても単位が交換できるくらいまでの深さにやっていくということが両立できるわけで、非常にバランスのとれたカリキュラムではないかなと思っています」と小林さん。
「もうひとつ、世界中から生徒さんがいらっしゃることを予測していますので、卒業後の進路も様々だと思うのです。自国に帰られる生徒もいるし、欧米や日本の大学に進学する生徒もいるでしょう。そうした場合に世界中の大学で受け入れられるというのは大きなメリットです。加盟校が多い点が、選択肢という意味では非常に大事に思います」

留学を通して学んだこと

自分自身の体験を通じ、国際バカロレアの考え方に共鳴しつつ、小林さんには講師へのこだわりがある。
「国際バカロレアだから良かったということではなく、誰が教えるか、自分がどこで学ぶかが大事なのです。いまでは国際バカロレアも世界中に4,400校くらいあり、多様な学校があるので、国際バカロレアそのものが差別要因になるのではなくて、どういう先生が、どういった思想のもとで教えているかのほうが大きいのですね。留学をして国際バカロレアだったから良かったというよりは、あの学校へ行ったことが自分にとって良かったということです」と小林さんは分析する。

小林さんは、高校を卒業後、開発途上国や貧困問題に携わる仕事につきたいと国際機関で働くことを希望し東京大学に進学した。そのきっかけになったのが、留学先カナダでの、86カ国から生徒が集まった学校生活で、さまざまな境遇や価値観の人たちとの出会いだった。中でも、親しくなった友人のメキシコ人の家を訪ねた際に、住まいはバラック同然で、兄弟で進学する機会に恵まれたのは友人だけ、という事実に衝撃を受けたという。「国際協力への興味が芽生えたのですね。機会の不均等だとか多くの疑問を強く感じたので、パブリックサーヴァントのようになりたいなと初めて強く思った」
まさに留学先の学校だったからこそ、日本での自分の恵まれた環境と友人とのギャップに気づき、将来の目標ができたというのだ。

チェンジメーカーを育成する学校へ

高校時代の体験から国連児童基金(ユニセフ)でフィリピンの貧困層教育に関わった。夜中や週末に、ストリートチルドレンのために読み書きを教える仕事に取り組むも、大きな貧富の格差と汚職が渦巻く国では、貧しい人たちを救えないと感じる。
「やはり国の問題に楔を打ち込むようなリーダーの教育も一緒にやっていかないと民主主義が機能していかない、根本的な解決にならない」という思いを強く抱くようになる。いまISAKのミッションには「アジア太平洋地域そしてグローバル社会のために変革を起こせるチェンジメーカーを育成」と掲げられている。
小林さんの思い描くチェンジメーカーとは、政治家とか企業のCEOになることではない。「どんな業界でもどんな立場からでも、新しい価値観を世の中に送り出せる人」と言う。たとえるなら、フィリピンの独立運動を先駆けたホセ・リサールのような文筆家や米国のスティーブ・ジョブズのような人たちも含まれる。「今まで人が考えてこなかったような価値観を世の中に送り出す、あるいはおかしいなとみんなが思ったけれども解を与えてこなかったようなことに、解を与えられるような人」それがISAKの理想とするチェンジメーカーのイメージという。

ISAKは欧米的な全寮制で、カリキュラムには国際バカロレアを導入し、公用語は英語だが、アジア的な価値観をリーダーシップ教育に取り入れている。「デモグラフィックをみたときに50年後には全世界のGDPも人口も50パーセント以上をアジアが占めると予測される時代において、いつまでもそれを率いるリーダーシップ像が欧米型ではおかしいのではないかというのが、根本的な問題意識としてあります。もっともっと多様なリーダーシップ像があってしかるべきです。アジア的価値観というのは一つでくくられるかどうかわかりませんが、もう少し行間を読む対応とか、調和型リーダーとか、いろいろな意味でのアジア的リーダーというのは必要なのではないかと思っています」と小林さんは語った。

(取材日2013年10月17日)
(文責 えいごネット編集部)

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