コラム~元素記号の話

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森村 久美子

東京大学非常勤講師

 

 

 本年5月1日の天皇の代替わりに先立って新しい元号が4月1日に発表されました。新元号は「令和」で初めて万葉集から採られたようです。これまでは漢語から採られることが多かったのですが、このたびは出典として日本の国書を採用するなど古きよき日本という国家を多分に意識したものといえましょう。この元号についてここで論ずるつもりはありませんが、元号、元号と聞くと理系人間としてはつい元素記号を思い出してしまうのです。1)元素記号は、元素を表記するために用いられる記号のことで、原子記号とも呼ばれます。 現在のところ元素の数は118番におよび、さらに173番まで予測されているのですが、2)これらの名前はほとんどがラテン語で、まれにギリシャ語、英語、ドイツ語などが語源となっています。 その名前がつけられた由来は、そのものの持つ性質、色などがその理由となっていたり、あるいは発見者の名前や発見された場所の地名に基づいていたりします。上記以外にも神話や鉱物が由来となっていることもあり、その命名方法は興味深いものです。


 ここで元素名を従来の周期表とは異なり名前の由来ごとに一覧で見てみましょう。

 

 

表1. 元素名とその由来


名前の由来

原子番号

元素名(英語)

由来

性質

1

水素(Hydrogen)

水から生じる

 

6

炭素(Carbon)

可燃物 carbo

 

8

酸素(Oxygen)

酸の元

 

11

ナトリウム(Sodium)

洗剤、ソーダ

 

15

リン(Phosphorus)

光を運ぶもの

 

18

アルゴン(Argon)

化合しない、働かない

 

28

ニッケル(Niccolum)

銅が取れない

 

34

セレニウム(Selenium)

月のように輝く

 

35

臭素(Bromine)

悪臭

 

36

クリプトン(Krypton)

見つけにくかったこと

 

42

モリブデン(Molybdenum)

鉛に似ている

 

43

テクネチウム(Technetium)

人工的に作られた

 

47

銀(Argentum)(Silver)

光沢

 

51

アンチモン(Antimony)

単体で見つからない

 

54

キセノン(Xenon)

揮発しにくさ

 

56

バリウム(Barium)

重い石

 

57

ランタン(Lanthanum)

隠れている

 

66

ジスプロシウム(Dysprosium)

近づきにくい

 

76

オスミウム(Osmium)

化合物の臭さ

 

78

白金(Platinum)

銀に似ている

 

79

金(Aurum)(Gold)

光り輝く

 

83

ビスマス(Bismuth)

易溶性

 

85

アスタチン(Astatine)

原子核が不安定

 

86

ラドン(Radon)

ラジウムから生じる

 

88

ラジウム(Radium)

放射線を出す

 

89

アクチニウム(Actinium)

放射線を放つ

 

91

プロトアクチニウム(Protactinium)

崩壊してアクチニウムになる

鉱物

4

ベリリウム(Beryllium)

緑柱石

 

5

ホウ素(Boron)

ホウ砂

 

7

窒素(Nitrogen)

硝石から生じる

 

9

フッ素(Flourine)

蛍石

 

12

マグネシウム(Magnesium)

マグネシア

 

13

アルミニウム(Aluminum)

明礬石

 

14

珪素(Silicon)

珪石

 

20

カルシウム(Calcium)

石灰石

 

25

マンガン(Manganese)

マンガン鉱

 

26

鉄(Ferrum)(Iron)

鉱物の一般名詞

 

27

コバルト(Cobalt)

コボルト

 

30

亜鉛(Zinc)

亜鉛鉱石

 

33

ヒ素(Arsenic)

雄黄

 

40

ジルコニウム(Zirconium)

ジルコン

 

48

カドミウム(Cadmium)

黄色鉱石

 

62

サマリウム(Samarium)

サマルスキー石

 

74

タングステン(Wolframium)

鉄マンガン重石

17

塩素(Chlorine)

黄緑

 

24

クローム(Chromium)

化合物が多色

 

37

ルビジウム(Rubidium)

炎色反応が赤い

 

45

ロジウム(Rhodium)

化合物がばら色

 

49

インジウム(Indium)

炎色反応が青藍色

 

53

ヨウ素 (Iodine)

蒸気が紫色

 

55

セシウム(Caesium)

炎色反応が青

 

59

 

プラセオジウム(Praseodymium)

化合物が緑色

 

77

イリジウム(Iridium)

化合物がさまざまな色、

虹の女神イーリス

 

81

タリウム(Thallium)

炎色反応が鮮やかな緑

神話

22

チタン(Titanium)

地球最初の息子Titans

 

23

バナジウム(Vanadium)

スカンジナビアの神Vanadis

 

41

ニオブ(Niobium)

タンタルスと共存するニオベ

 

61

プロメテイウム(Promethium)

プロメテイウス

 

73

タンタル(Tantalum)

酸に溶けないタンタロス

 

80

水銀(Mercury)

メルクリウス

 

90

トリウム(Thorium)

軍神Thore

 

92

ウラン(Uranium)

天王星Uranus

 

93

ネプツウム(Neptunium)

海王星Neptune

場所

2

ヘリウム(Helium)

太陽上

 

21

スカンジウム(Scandium)

スカンジナビア

 

29

銅 (Copper)

キプロス島

 

31

ガリウム (Gallium)

フランスの古名ガリア

 

32

ゲルマニウム (Germanium)

ドイツの古名ゲルマニア

 

38

ストロンチウム(Strontium)

採れたスコットランドの鉱山

 

39

イットリウム (Yttrium)

鉱物が発見されたYitterby

 

44

ルテニウム (Ruthenium)

発見されたロシア

 

63

ユーロピウム(Europium)

発見されたヨーロッパ

 

65

テルビウム (Terbium)

鉱物が発見されたイッテルビー

 

67

ホルミウム (Holmium)

ストックホルムの古名Holmia

 

68

エルビウム (Erbium)

発見されたイッテルビー

 

69

ツリウム (Thulium)

スカンジナビアのThule

 

70

イッテルビウム (Ytterbium)

発見された地名

 

71

ルテチウム (Lutetium)

パリの古名Lutetia

 

72

ハフニウム (Hafnium)

コペンハーゲンの古名Hafria

 

75

レニウム (Rhenium)

発見地ドイツのライン川

 

84

ポロニウム (Polonium)

キュリーの出身地ポーランド

 

87

フランシウム(Francium)

発見地フランス

 

95

アメリシウム(Americium)

発見地アメリカ

 

97

バークリウム(Berkelium)

発見地バークレー

 

98

カリフォルニウム(Californium)

発見地カリフォルニア

 

105

ドブニウム(Dobnium)

発見地ドルナ

 

108

ハシウム(Hassium)

ドイツのハッセン、ハッシア

 

110

ダルムスタチウム(Darmstatium)

ドイツのダルムシュタット

 

113

ニホニウム(Nihonium)

発見地日本

 

115

モスコビウム(Moscovium)

モスクワ

 

116

リバモリウム(Livermorium)

研究所所在地リバモア

 

117

テネシン(Tennessine)

研究所所在地テネシー

発見者

64

ガドリニウム (Gadolinium)

Johan Gadolin

 

96

キュリウム(Curium)

Curie夫妻

 

99

アインシュタイニウム (Einsteinium)

Einstein

 

100

フェルミウム(Fermium)

Enrico Fermi

 

101

メンデレビウム(Mendelevium)

ドミトリ・メンデレエフ(露)

 

102

ノーベリウム(Nobelium)

Alfred Nobel

 

103

ローレンシウム(Lawrencium)

Ernest Lawrence

 

104

ラザフォージウム(Rutherfordium)

Ernest Rutherford

 

106

シーボーギウム(Seaborgium)

Glenn Seaborg

 

107

ボーリウム(Bohrium)

Niels Bohr

 

109

マイトネリウム(Meitnerium)

Lise Meitner

 

111

レントゲニウム(Roentgenium)

Wilhelm Röntgen

 

112

コペルニシウム(Copernicium)

Nicolaus Copernicus

 

114

フレロビウム(Flerovium)

ゲオルギー・フリョロフ(露)

 

118

オガネソン (Oganesson)

ユーリ・オーガネシアン(露)

その他

3

リチウム (Lithium)

岩ithosから採取

 

10

ネオン(Neon)

新しい

 

16

硫黄 (Sulphur)

不明

 

19

カリウム (Potassium)

木炭から採れる

 

46

パラジウム(Palladium)

女神Pallasから

 

50

スズ(Tin)

混同されていた合金から

 

52

テルルリウム(Tellurium)

地球 tellus より

 

58

セリウム(Cerium)

小惑星Ceres

 

60

ネオジム(Neodymium)

新しい双子

 

82

鉛(Lead)

語源不詳

 

94

プルトニウム(Plutonium)

冥王星 Plutoより

 


 こうしてみると元素記号とその由来はとても興味深いと思いませんか。神話あり、鉱物あり、地名あり。3)それぞれの元素が持つもっと深い発見の物語を読んでみたい気がします。

 



※ コラム記事の下線部分1, 2, 3とその英訳例 

 

1)元素記号は、元素を表記するために用いられる記号のことで、原子記号とも呼ばれます。

 

2)これらの名前はほとんどがラテン語で、まれにギリシャ語、英語、ドイツ語などが語源となっています。

 

3)それぞれの元素が持つもっと深い発見の物語を読んでみたい気がします。

 

 

1) Elemental symbols are the symbols that are used to indicate elements and also called atomic symbols.
 
2) These names are mainly Latin, and rarely come from Greek, English and German.
 
3) I would like to read a deeper story of the discoveries of each element.

 

 

 

参考文献:

  

斉藤一夫「元素の話」培風館 1982年

 

元素の一覧 ― ウィキペディア(Wikipedia)

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%85%83%E7%B4%A0%E3%81%AE%E4%B8%80%E8%A6%A7

 

文部科学省 科学技術週間 「一家に1枚」元素周期表

http://stw.mext.go.jp/common/pdf/series/element/element_a11s2.pdf



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